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大阪地方裁判所 平成8年(ワ)2319号 判決 2000年2月28日

原告

中垣静佳

ほか二名

被告

池田茂

ほか一名

主文

一  被告らは、連帯して、原告中垣静佳に対し一億三五六六万八一五一円、同中垣友昭に対し三三〇万円、同中垣昌枝に対し三三〇万円及びこれらに対する平成五年四月二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、これを四分し、その一を原告らの負担とし、その余を被告らの負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告らは、連帯して、原告中垣静佳に対し一億八二五〇万四七九五円、同中垣友昭に対し六〇〇万円、同中垣昌枝に対し六〇〇万円及びこれらに対する平成五年四月二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、被告テイパ化工株式会社(以下「被告テイパ」という。)保有、被告池田茂(以下「被告池田」という。)運転の普通貨物自動車が、交通整理の行われていない交差点内の横断歩道上を歩行中の原告中垣静佳(以下「原告静佳」という。)に衝突した事故について、原告静佳及びその両親が被告池田に対しては民法七〇九条、七一〇条に基づき、被告テイパに対しては自賠法三条、民法七一五条に基づき損害賠償請求をした事案である。

一  争いのない事実

(一)  当事者

原告中垣友昭(以下「原告友昭」という。)は、原告静佳の父であり、原告中垣昌枝(以下「原告昌枝」という。)は原告静佳の母である。

(二)  事故(以下「本件事故」という。)の発生

日時 平成五年四月二日午後三時四〇分ころ

場所 大阪市東淀川区西淡路六丁目二番先路上(以下「本件交差点」という。)

車両 普通貨物自動車(なにわ四四る一七七七)(以下「被告車両」という。)

運転者 被告池田

(三)  事故態様

本件交差点は、東西道路と南北道路が交差する信号機による交通整理の行われていない交差点であり、東西道路は片側二車線である。また、本件交差点東側入口付近には、横断歩道が設置されている(以下「本件横断歩道」という。)。

原告静佳は、本件横断歩道を南から北に(被告車両から見て右から左に)歩行して横断していた。一方、被告車両は、東西道路を、西から東に本件交差点に向かって走行していたが、右側車線(中央線側)は渋滞中で車両が連続停止していたため、左側車線(外側)を時速約四五kmで走行していた。そして、本件横断歩道を右から左に横断して来る歩行者はいないものと軽信してその安全を確認せず漫然時速約四五kmで進行したため、本件横断歩道上を歩行中の原告静佳を被告車両前部に衝突させた上、路上に転倒させた。その結果、原告静佳は、脳挫傷、外傷性脳血管攣縮、慢性破膜下血腫の傷害を負った。

(四)  責任原因

被告池田には、本件事故につき安全確認義務違反等の過失がある。

被告テイパは、被告池田の使用者であるところ、本件事故は被告池田が同社の事業の執行中に発生したものである。

被告テイパは、被告車両の保有者である。

(五)  入通院経過

ⅰ 大阪市立城北市民病院(現在、大阪市立都島総合医療センター)入院

平成五年四月二日から同年七月一九日まで

ⅱ ボバース記念病院入院

平成五年七月二〇日から同年一一月一五日まで

ⅲ ボバース記念病院通院

平成五年一一月一六日から平成六年九月二六日(症状固定日)まで

(六)  後遺障害の内容、程度及び症状固定日

ⅰ 後遺障害の内容 痙直型四肢麻痺、失語症、学習障害

ⅱ 後遺障害等級 一級

ⅲ 症状固定日 平成六年九月二六日

(七)  損害のてん補 合計四二五四万三六九二円

ⅰ 治療費(病院への支払) 四七八万九三八七円

ⅱ 被告テイパからの直接の支払 二六〇万七三三二円

ⅲ 任意保険からの支払等 五一四万六九七三円

ⅳ 自賠責保険金 三〇〇〇万円

二  争点

本件の争点は、損害額であり、特に原告静佳の余命期間である。

(原告静佳の主張)

(一) 治療費 四八〇万一九二七円

大阪市立城北病院 三六七万二八五〇円(被告支払)

ボバース記念病院 一一一万六五三七円(被告支払)

原告静佳支払分 一万二五四〇円

(以上には、健康保険組合による支払分は含まない。)

(二) 入院付添費 一〇二万六〇〇〇円

平成五年四月二日から同年一一月一五日まで二二八日間、日額四五〇〇円を要した。

(計算式)

四五〇〇円×二二八日=一〇二万六〇〇〇円

(三) 将来の付添看護費用

ⅰ 平成五年一一月一六日から平成七年一二月三一日までの七七六日間。

原告静佳の症状は、本人一人では日常生活が全く不可能な状態にある。昼夜を問わず、ひと時たりとも目を離すことができず、同人の自宅における付添看護には交代看護が不可欠であるから、付添看護の要員としては二名が必要である。したがって、日額九〇〇〇円を要した。

(計算式)

四五〇〇円×二×七七六日=六九八万四〇〇〇円

ⅱ 平成八年一月一日から平成三三年まで

原告友昭(昭和二九年一月七日生まれ)は、平成三三年に満六七歳を迎えるから、原告友昭が原告静佳の付添看護ができるのは、平成八年から平成三三年までの二六年間(新ホフマン係数一六・三七九)である。

(計算式)

四五〇〇円×二×三六五日×一六・三七九=五三八〇万五〇一五円

ⅲ 平成三四年以降

平成三四年以降は原告静佳の付添看護を両親がすることは不可能であるから、職業付添婦を雇用しなければならないところ、職業付添費は一日当たり一万円である。平成八年一月一日における原告静佳の年齢は九歳であり、平均余命は、七四・〇一年間(新ホフマン係数三〇・五六二)である。

(計算式)

一万円×三六五日×(三〇・五六二-一六・三七九)=五一七六万七九五〇円

(四) 入院雑費 二九万六四〇〇円

平成五年四月二日から同年一一月一五日まで二二八日間、日額一三〇〇円を要した。

(計算式)

一三〇〇円×二二八日=二九万六四〇〇円

(五) 装具費用 六一万一一七七円

両短下肢装具代金 六万九四二七円

リハビリ用椅子代金 三九一〇円

起立保持具代金 八万二四〇〇円

リハビリ用椅子代金 六万円

リハビリ用机代金 三万八一一〇円

補装具(車椅子)負担金 二二五〇円

リハビリ用椅子代金 一万〇五三六円

リハビリ用椅子代金 二九三一円

リハビリ用歯ブラシ代金 四二六四円

OT材料費(フロンボードテーブル) 一万〇七〇〇円

OT材料費(はいはい器) 五七〇〇円

両短下肢装具代金 七万三八〇五円

起立保持具等修理代金 一万〇五三六円

シートベルト代金 三五一二円

車椅子代金 一一万円

安心スロープ・介助ベルト代金 二万四〇〇〇円

歩行器レンタル代金 三七一〇円

両短下肢装具代金 九万五三八六円

(六) オムツ代

原告静佳は自力で大小便ができず、常時オムツを着用し、また大便のために浣腸をしなければならない。

なお、原告らにおいて、平成七年一月から同年一二月までの一年間のオムツや浣腸の代金は、三七万九九七一円である。

ⅰ 平成五年四月二日から平成七年一二月三一日まで

(計算式)

三七万九九七一円×(九+一二+一二)÷一二=一〇四万四九二〇円

ⅱ 平成八年一月一日以降

原告静佳は、一生(七四・〇一年間)の間オムツと浣腸を続けなければならない。

(計算式)

三七万九九七一円×三〇・五六一六一〇一六=一一六一万二五二六円

(七) 交通費等

ⅰ 平成五年四月二日から平成六年九月二六日(症状固定日)まで

原告静佳の入院中は、原告友昭、同昌枝が毎日二人で付添、また原告静佳の祖父母も付添に訪れた。原告静佳が退院中も、原告友昭らは原告静佳をボバース記念病院に通院させた。この間、原告友昭所有の自動車で通院させることもあったが、タクシーを利用することも多かった。

タクシー料金 五二万〇六六〇円

高速料金 四万九〇〇〇円

有料橋料金 五万五八〇〇円

ガソリン代 七万〇二六三円

その他 一〇万六九〇八円

ⅱ 平成六年九月二七日から平成七年一二月三一日まで

症状固定後であってもリハビリを続けないと原告静佳の両腕、両下肢は屈曲したまま固定されてしまう。症状固定時の状態を保持するためには、リハビリを続けなければならないのが現実である。リハビリ及び診察のため、原告静佳は平成六年九月二七日から平成七年六月までの九ヶ月間は月九回くらい、平成七年一〇月から同年一二月までの三ヶ月間は月五回くらいの割合でボバース記念病院に通院していた。この通院に関してはタクシーを利用したが、タクシー代は往復で約六〇〇〇円である。

(計算式)

六〇〇〇円×(九×九+五×三)=五七万六〇〇〇円

ⅲ 平成八年一月一日以降

(計算式)

六〇〇〇円×五×一二×三〇・五六一六一〇一六=一一〇〇万二一八〇円

(八) 自動車購入費 三九四万〇七五一円

原告友昭は、従前乗用車(トヨタクラウン)を所有していたが、原告静佳の車椅子がトランクに入らなかったので、平成五年一二月トヨタハイエースを購入した。

(九) 逸失利益 三七九六万六四八〇円

平成五年度女子労働者学歴計一八歳から一九歳平均賃金は、二〇六万四九〇〇円である。事故当時原告静佳は六歳であり、六七歳までの期間(新ホフマン係数二七・六〇一七〇六〇二)から、一八歳までの期間(新ホフマン係数九・二一五一一〇七七)を除いた期間について、就労可能であったから、原告の逸失利益は、以下の計算式のとおりとなる。

(計算式)

二〇六万四九〇〇円×一八・三八六五九五二五=三七九六万六四八〇円

(一〇) 慰謝料

ⅰ 入通院慰謝料 二八一万円

入院七ヶ月、通院一一ヶ月分として上記金額が相当である。

ⅱ 後遺障害慰謝料 二四〇〇万円

後遺障害等級は一級であるから、上記金額が相当である。

(一一) 弁護士費用 一二〇〇万円

(原告友昭の主張)

(一) 慰謝料 五〇〇万円

眼に入れても痛くない程可愛がり、愛情をもって育て、事故がなければ一週間後に小学校に入学する夢と希望をもっていた愛児を一瞬にして身体も言葉も不自由にさせられた原告友昭の悲しみ、絶望感は筆舌に尽くし難い。そして、原告友昭は今後の人生のすべてを原告静佳の介護にのみかけていかなければならない。同人の慰謝料としては五〇〇万円が相当である。

(二) 弁護士費用 一〇〇万円

(原告昌枝の主張)

(一) 慰謝料 五〇〇万円

原告昌枝も原告友昭と同様、慰謝料として五〇〇万円が相当である。

(二) 弁護士費用 一〇〇万円

(被告らの主張)

(一) 介護費用

原告らは、原告静佳の付添看護費には二名の看護を要すると主張するが、原告静佳がある程度回復している点を考慮すると、付添看護は一名で可能である。

(二) 余命

原告静佳は、脳幹に重篤な傷害を生じているところ、脳幹は生命維持と成長を司る極めて重要な器官であり、その器官に重大な損傷を生じていることは、原告静佳の生命維持・成長にとって重大な障害となるものである。

したがって、原告静佳の余命は約一〇年と考えるべきである。

(三) 交通費

症状固定後の交通費は、将来の介護料あるいは慰謝料に含めて考慮されるべきである。

第三争点に対する判断

一  前提事実(原告静佳の症状経過等)

証拠(甲一ないし六、七の一、二、甲八、乙一ないし六、鑑定嘱託の結果)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(一)  原告静佳(昭和六一年九月一八日生まれ)は、平成五年四月二日(当時六歳)、本件事故により受傷し、同日、大阪市立城北市民病院に救急搬送された。当初の原告静佳の症状は、以下のとおりであった。

痛み刺激にわずかに四肢運動を認める程度で重度の意識障害がある。瞳孔不同であり、動眼神経の損傷、あるいは中脳への障害があった。バビンスキー反応は陽性であり、運動系神経路の障害があった。初回のCTでは、くも膜下出血、脳室内出血及び脳溝の描出不良が認められ、急性腫脹並びに一次脳幹損傷が疑われているが、出血の程度は軽度であった。

これらの症状は徐々に快復したが、大阪市立城北市民病院退院時においても、開眼はできるが、遷延性意識障害、失語、四肢麻痺の状態が残存した。

(二)  原告静佳は、本件事故日より平成五年七月一九日まで大阪市立城北市民病院に入院し、同月二〇日よりボバース記念病院に転院し、同年一一月一五日まで入院した。

なお、上記入院中、原告昌枝が付添看護をしたほか、原告友昭も仕事の合間に付添看護をした。

(三)  原告静佳は、ボバース記念病院退院後も同病院に通院し、平成六年九月二六日痙直性四肢麻痺、失語症及び学習障害の傷病名で症状固定と診断され、自算会により後遺障害等級一級に該当するものと認定された。症状固定後もリハビリのため同病院に通院するほか、大野カイロプラクティックに平成七年一月から平成八年一月まで通院し、十字式健康普及会に平成六年二月から同年六月まで通院し、日之出障害者会館に平成七年一〇月から通院するなどした。

この間、主に原告昌枝が原告静佳の介護をするほか、原告友昭も仕事の合間に原告静佳の介護にあたった。また、原告静佳は、平成六年四月より淡路小学校に入学し、一学期は、普通学級に通い、二学期より特別学級に通った。

平成六年一一月三〇日より原告昌枝は家を出て行方不明となったため、その後は原告友昭が主に原告静佳の介護をするほか、職業付添人による介護がなされた。

(五)  原告静佳は、平成一一年一月一八日より同月三〇日まで、鑑定のための検査入院をし、以下の症状が認められ、症状固定日から症状に特段の変化はないものとされた。

意識状態は清明であるが、見当識は、問いかけに応じず検査できず。

離握手、開閉眼、舌だしなどの動作を伴う単純命令には十分応じられるが、観念的あるいは抽象的な回答を要する課題はほとんど遂行できない。

「おはよう」「めがね」「とけい」など単純な言葉を復誦させることは可能、構音障害はないが、発声速度は遅い。

機嫌はよく、短時間じっとさせることは可能であるが、命令に応じさせることは困難。

四肢の運動は全体的に見て比較的ゆっくりだがスムーズであり、ただし、右上肢は巧緻運動が困難である。

左手はつまむ、握る、さじで食事をする、顔に手のひらをつける、ズボンの前ボタンのところに手をやる、尻のところに手をやるなどの基本動作は可能であるが、右手では困難であるか不能である。したがって、両手を使うタオル絞り、ひも結び、上衣の着脱、ボタン留め、ズボンの着脱などはできない。座ることは可能、立上がりは支持があれば可能であるが、歩行は不能である。

便秘のため排便に浣腸を要する。自制できず排便・排尿とも失禁状態。

(六)  原告静佳の器質的症状としては、広範な大脳半球、間脳、中脳、橋の機能障害があり、対応する脳機能、特に高じ脳機能に著しい障害が認められる。なお、鑑定人加藤天美は、原告静佳の主な病態は、びまん性軸索損傷と考えるのが妥当としている。そして、原告静佳は、急性期には重度の意識障害、生命徴候の変動など、視床下部を含む間脳、中脳、橋など、意識や生命維持に不可欠な機能の障害が主たる症状であったが、治療の経過とともに回復し、鑑定のための検査入院時には、上記器質的障害による意識や生命維持に関する差し当たっての障害はなかった。ただし、頭部外傷後、植物状態あるいは全面介助状態におちいった小児患者は肺炎や消化器障害、筋炎、異所性骨化、褥創などに罹患しやすいといわれており、これらにより生命予後が左右される可能性はありうる。

二  損害額

(一)  治療費 四七八万九三八七円

原告静佳主張の治療費中、四七八万九三八七円については、当事者間に争いがない。原告静佳主張の残一万二五四〇円については、それを認めるに足りる証拠はない。

(二)  入院付添費 一〇二万六〇〇〇円

前記争いのない事実により、原告静佳は、平成五年四月二日から同年一一月一五日まで二二八日間にわたり入院したことが認められるところ、前記認定の症状経過等及び弁論の全趣旨により、その間主に原告昌枝が必要により付添ったものと認められ、その付添看護費として日額四五〇〇円を要したと認めるのが相当である。

(計算式)

四五〇〇円×二二八日=一〇二万六〇〇〇円

(三)  将来の介護費用 八七九三万四三四〇円

ⅰ 退院(平成五年一一月一六日、当時、原告静佳七歳)以後の介護費用

前記認定の症状経過及び退院後の介護状態等からすれば、原告静佳の退院後、平成六年一一月三〇日までは、主に原告昌枝の介護がなされ、補完的に原告友昭の介護が必要であったことが認められ、同日以後は、原告友昭の介護のほか、それを補完する職業付添人による介護も必要であることが認められ、原告静佳が小学校に通学するなど公共施設における介護を考慮しても、リハビリ及びその交通費等を含めて、平成五年から原告友昭が六七歳になる平成三三年までの二八年間(新ホフマン係数一七・二二一)については、原告静佳の付添介護費用として平均日額六〇〇〇円を要するものと認める。

平成三四年以降は、両親が原告静佳の介護をすることを期待できず、職業付添人による介護が必要であるから、リハビリ及びその交通費等の費用を含めて、介護費用として日額一万円を要するものと認めるのが相当である。

また、前記認定の原告静佳の症状等からすれば、本件事故による脳の器質的障害により、生命維持について特段の障害があるとは認められず、肺炎等に罹患する危険性はある程度通常人よりは高いとはいえ、その危険性を考慮した介護がなされていれば、特段、通常人と生命維持の点について、異にして考えるべき事情は認められない。したがって、平成五年簡易生命表女子平均余命に照らし、原告静佳主張の範囲内で八三歳まで、すなわち、退院時(七歳)から七六年間(新ホフマン係数三〇・九八〇)介護費用が必要として計算するのが相当である。

以上により、原告静佳の介護費用は、以下のとおりとなる。

(計算式)

六〇〇〇円×三六五日×一七・二二一+一万円×三六五日×(三〇・九八〇-一七・二二一)=八七九三万四三四〇円

(四)  入院雑費 二九万六四〇〇円

平成五年四月二日から同年一一月一五日まで二二八日間の入院中、日額一三〇〇円の入院雑費を要したものと認める。

(計算式)

一三〇〇円×二二八日=二九万六四〇〇円

(五)  装具費用 五〇万円

被告が、装具費等として三六万四〇三三円支払済みであることは当事者間に争いのないところ、前記認定の原告静佳の症状及び介護状況等からすれば、原告静佳主張の装具費用のうち五〇万円を本件事故と相当因果関係ある損害と認める。

(六)  オムツ代 九二九万四〇〇〇円

前記認定のとおり、原告静佳は自力で大小便ができず、常時オムツを着用し、また大便のために浣腸をしなければならない。

退院後のオムツ代、浣腸代については、前記認定の症状経過及び介護状況並びに弁論の前趣旨からすれば、原告静佳主張の内、年額三〇万円を本件事故と相当因果関係ある損害と認めるのが相当である。

したがって、原告静佳の退院後(七歳)から七六年間のオムツ代、浣腸代は以下の計算式のとおりとなる。

(計算式)

三〇万円×三〇・九八〇=九二九万四〇〇〇円

なお、入院期間中のオムツ代、浣腸代については、入院雑費に含めて考慮する。

(七)  交通費等 六五万四四〇〇円

入院中の付添人の交通費については、付添看護費用に含めて考慮する。

証拠(甲一)によれば、原告静佳は、平成五年六月一八日から症状固定日まで、合計七五日ボバース記念病院に通院したことが認められ、被告らが原告に対して交通費として六五万四四〇〇円支払ったことは争いがないところ、前記認定の原告静佳の症状等を考慮すれば、症状固定日までの原告静佳の交通費として、六五万四四〇〇円を本件事故と相当因果関係ある損害と認めるのが相当である。

また、前記認定の事実からすれば、原告静佳は、症状固定後もリハビリ等のために、ある程度の頻度で通院する必要があることが認められるが、前述のとおりリハビリ費用及びその交通費等については、将来の介護費用に含めて考慮する。

なお、原告友昭が乗用車を買い換えた費用については、本件事故と相当因果関係ある損害とは認められない。

(八)  逸失利益 三七九六万七三一六円

前記認定の原告静佳の症状からすれば、本件事故による原告静佳の労働能力喪失率は一〇〇%と認められる。原告静佳は、一八歳から六七歳まで、年間二〇六万四九〇〇円(平成五年度女子労働者産業計・企業規模計・学歴計一八歳から一九歳平均賃金)の収入が得られたものと認められる。事故当時、原告静佳は六歳であり、六七歳までの期間(新ホフマン係数二七・六〇二)から、一八歳までの期間(新ホフマン係数九・二一五)を除いた期間について、就労可能であったから、原告静佳の逸失利益は、以下の計算式のとおりとなる。

(計算式)

二〇六万四九〇〇円×一八・三八七=三七九六万七三一六円(一円未満切捨て)

(九)  慰謝料(原告静佳分) 二六七五万円

原告静佳の入通院状況等を考慮すれば、入通院慰謝料を二七五万円とするのが相当である。

原告静佳の症状、原告静佳の事故当時の年齢等を考慮すれば、後遺障害慰謝料を二四〇〇万円とするのが相当である。

(一〇)  損害のてん補

以上、原告静佳の損害額合計は一億六九二一万一八四三円であり、既払額は四二五四万三六九二円であるから、残額は、一億二六六六万八一五一円となる。

(一一)  慰謝料(原告友昭、同昌枝分) 各三〇〇万円

原告静佳の両親である原告友昭及び同昌枝が本件事故により被った精神的苦痛、介護の労などを考慮すれば、同人らの慰謝料を各三〇〇万円とするのが相当である。

(一二)  弁護士費用

本件事案の内容、審理の経過、認容額等に照らし、被告らに負担させるべき弁護士費用としては、以下のとおりとするのが相当である。

原告静佳分 九〇〇万円

原告友昭分 三〇万円

原告昌枝分 三〇万円

三  よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 中路義彦 山口浩司 下馬場直志)

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